旗竿敷地に建つ3階建ての二世帯住宅の計画。この敷地は、周囲を平家や2.3階建の住宅に囲まれていますが、2階レベルでは特定の方向に視線が抜け、3階まで上がると鶴見の起伏のある地形と街並みを一望できるという、各層ごとに街との繋がりを感じられる環境です。


建物は、4間角の一辺を偏心した台形の平面形をしており、外壁の1辺を偏心することで建物が通りに顔を出す佇まいとなります。通りに顔を出した2層の高さを持つ門型のポーチから人々を建物内部に招き入れる構造になっています。また、建物は旗竿敷地の旗の部分のほぼ中央に配置することで、周囲に均等に空地を残し、隣接する建物との間に十分な空きを確保しています。この建物の配置によって、銀色の外壁に反射した光を建物の周りに拡散させ、その柔らかな光を室内へ取り込みます。


建物内部は3層を貫通する階段を家の中心に置き、その周りにさまざまな生活空間と大小の吹き抜けを配置した構成になっています。階段の上下動や留まる場所が変わることで、視界に入る風景が次々と変化していきます。階段や吹き抜け越しに、家の中の生活風景と家の外に広がる街の風景が重なり合い、家と街の内外を分け隔てなく感じることができます。子世帯夫妻は在宅で仕事をしているため、日々のほとんどの生活は住まいの2.3階の空間で完結します。多くの時間を家で過ごす建主のため、この場所の特性を活かした変化に富んだ生活空間を計画しました。


家全体の空間が立体的につながる計画のため、適切な断熱気密処理と熱交換器によって、安定した温熱環境を実現しました。また、室内に生じる熱だまりを解消するため、季節ごとに換気方向を反転できるファンと空気循環用のダクトを壁面に組み込むことで、家全体の温熱環境を均一に保つ工夫をしています。