坂の途中に位置する三角形の敷地に計画した戸建て住宅。敷地は擁壁によって造成された坂の上の五角形の宅地部分と、坂の下の三角形の駐車スペースに分かれている。駐車スペースより約1.5m高い位置にある宅地部分は東西南面に対して丘の上に立つような感覚の環境である。
計画は造成された坂の上の宅地部分に敷地形状をなぞった五角形の平面で最大の建築面積を確保した。五角形の平面の中、南北に縦断する登り梁を通し、その梁にもたれかかるように東西にそれぞれ梁を渡すことで、建物の東側に整形の生活空間、西側には敷地の形をそのまま縮小したような三角形の階段室を計画している。地形に沿うゆったりとした階段によって、通りの坂を登る一連の流れのまま2階の生活空間に人を導きたいと考えた。また、東西に展開した2階の居住空間からはそれぞれ異なる見晴らしを感じることができ、東西に設けた開口と空間を隔てる南北方向の梁と壁によって、1日の中で東西の空間の明暗が反転し空間の印象が大きく変化していく。
敷地に最大限の建築を確保し、整形の部屋を作るという合理的な一般解の中で、敷地形状を写した不合理な形の階段が、街と住まい・家族を関係づける場となり、この地に新たに移り住む家族が豊かな暮らしを送るためのきっかけになると考え取り組んだ住宅の計画である。
DATA
- 所在地
- 神奈川県横浜市
- 完成
- 2023年
- 構造・用途
- 木造・戸建住宅
- 工事種別
- 新築
- 床面積
- 120㎡
- 設計・施工
- 古谷野工務店
- 写真
- 西川公朗