坂の途中に位置する三角形の敷地に計画した戸建住宅。敷地は、擁壁によって造成された坂の上にある五角形の宅地部分と、坂の下にある三角形の駐車スペースに分かれています。駐車スペースより1.5m程高い位置にある宅地部分は、東西南面に対して丘の上に立つような環境です。
建主からの要望は、家族ぐるみで仲の良い友人が多く訪れるため、女性が集う台所と男性が集う居間、そして子供たちが遊ぶ客間を兼ねた和室を設けることでした。
この計画では、造成された坂の上の宅地部分に敷地形状をなぞった五角形の平面で最大の建築面積を確保しました。五角形の平面の中に南北に縦断する登り梁を通し、その梁にもたれかかるように東西に互い違いに梁を渡すことで、建物の東側に整形の生活空間、西側には敷地の形をそのまま縮小したような三角形の階段室と和室を計画しました。このゆったりとした階段により、通りの坂を登る一連の体験の流れのまま丘を登るように2階の生活空間に導かれます。2階の居住空間からは東西にそれぞれ異なる見晴らしを楽しむことができ、東西の空間を隔てる南北方向に縦断する梁と壁によって、一日の中で東西の空間の明暗が反転し、空間の印象が大きく変化していきます。
敷地に最大限の建築面積を確保し、機能的な整形の空間を作るという合理的な解の中で、特徴的な敷地形状と地形を写した不合理な形の階段の存在が、この地で新たな生活をスタートする家族のための、街と住まい・家族の生活を関係づける場になると考えた計画です。