小規模ビルのワンフロアの住戸のリノベーション。既存の住戸は光の入らない中廊下や窮屈な玄関、独立した暗いキッチンなど、住空間として不健全と感じられる空間が散見された。
計画は、一部の間仕切り壁の位置をわずかに動かすことで、暗さや窮屈さを感じた場所に光と空間のゆとりを与え、不健全と感じられた空間の質を改善した。間仕切り壁の位置の変更によって、これまで壁と同化していた2本の柱を独立柱として空間の中に現した。柱の仕上げには特徴的な素材と高い密度のディテールを用いることで、建物全体の中での柱の存在を強くしている。
外部を見通せない場所が多く存在し、建物全体の中での自分の現在地が掴みにくい広い住戸において、2本の柱の存在が建物の中における自分の現在地を認識する手がかりとなることを意図した。
大きな間取りの変更を求められない中、わずかな壁位置の移動と光の扱いによって、空間の質を改善し建物の持つ特徴を引き出した計画である。柱や壁に用いたヒッコリーやカバザクラの突板は施主の朗らかな人柄から、その人に近しい雰囲気の大らかなの杢目の樹種を採用した。
