
イタリア郷土料理を提供するレストランの改修計画。店舗は駅へと至る主要な動線上に位置し、行き交う人々や電車による街の喧騒と隣り合う環境にあります。
本計画では、居抜き物件という条件のもと、既存の空間構成や内装のフォルムに大きく手を加えることなく、各要素の色調や素材を整理・更新することで、空間の質の転換を図りました。
店舗内部は、墨色に染めたオークの床と檜の羽目板を用い、光を抑えた落ち着きある空間としました。街の喧騒から切り離された静けさが、訪れる人の感覚を緩やかに切り替えます。テーブルやカウンターには木の肌理をそのまま残すことで、空間において各卓と供される料理が自然に際立つ設えとしました。
外部に対しては、駅側からの視認性に配慮し、ファサードの角に控えめなサインを配置。エントランスには歩道の舗装と呼応するレンガタイルを用い、街並みとの緩やかな連続性を持たせながら、店舗の存在をさりげなく印象づけています。
店名「il Legame」は、イタリア語で「絆」や「繋がり」を意味します。その想いを視覚化するため、サインにはイタリア古書に見られる書体を採用し、手仕事の気配や温もりを表現しました。店内には、オーナーシェフ・蒔苗氏の姓と店名に込められた想いに重ね、ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》のリトグラフを掲げています。
「日常の中の、少し特別な場所」となることを目指し、控えめな佇まいの中に、静かな非日常の気配を宿すことを意図しました。
DATA
- 所在地
- 東京都豊島区
- 完成
- 2025年
- 構造・用途
- RC造・飲食店
- 工事種別
- 38㎡
- 設計・施工
- 古谷野工務店
- グラフィック
- 矢嶋大祐
- 写真
- 佐々木彗




















